真夏のある日、一通の苦情がマンションの管理人さんから届いた。
「あなたの部屋がうるさい。」
若い時によくある苦情だ。
この頃、一人暮らしをしており騒音を出す要素は何もなかったため、何かの間違いだと思い、そのままにしていた。
数日後また同じ苦情が届いた。同じ内容である。
これも無視した。
さらに数日後、やはり同じ苦情が届く。
もう一度苦情の内容を確認した。
「あなたの部屋」、「騒音」、「苦情」・・・
同じキーワードが並ぶ。
ん!!!
「夜」
初めて気づいた。
夜に騒音が出ているらしい。
その時間は寝ている時間。騒音を出せるはずがない。
自分が凄まじい音でいびきをかいているのか・・・
3回も同じ苦情が届いていたので、一応、「夜」というキーワードを頼りにしながら、夜の部屋を確認するために徹夜をすることにした。
・・・・・・・
全てのキーワードが繋がった。
部屋から、いやベランダから凄まじい音を立てた悪魔がいたのである。しかも世界が静まりかえる夜に。
エアコンの室外機が爆音を立てて自分の部屋を冷酷に冷やしてくれていた。
天使のような悪魔の笑顔である。
すぐさまエアコンを切り、寝苦しい夜に耐えながら、翌朝、業者に連絡した。
業者もすぐさまその悪魔を確認しに行く。
しかし、異常が見当たらないらしい。
以上が見当たらないため、修理できないとのこと。
キーワードは「夜」。
昼にはひっそり悪魔は身を潜めている。
うまく業者の攻撃を回避したのである。
業者とすったもんだ繰り返しても異常を検出できなければ、修理できない。
よく理解できた。
業者は夜に来てくれるわけもなく
自分で悪魔を捕まえに行くことにした。
その時はきた・・・・
大きな音を立てながらあざ笑っているかのように誘っている。
室外機のカバーを外してみる。
何もない。
ファンを覗き込むと、錆びて擦れた音がそこから発せられていた。
これか・・・
556をひとふき。
・・・・・・・・
戦いは終わった。
それからは苦情も来なくなった。
平穏な日常が戻った。
悪魔に勝ったのである。
ここから学んだこと。
プロでも異常を検出できなければ修理できない。
素人でも異常を検出さえできればなんとかなる。
正しく修理するためには、正しく異常を検出する必要があります。
つまり、
正しい治療は正しい診断からです。